4.4 卸売業 在庫管理システム

ITシステム

在庫管理システムは、主として、受払管理、在庫引当、棚卸、在庫評価から構成されます。なお、本稿では物流センターで利用される倉庫管理システムの機能も一部含めて説明しています。

【受払】   

受払の目的は、物流センター、営業所倉庫などのロケーション別に在庫の増減を漏れなく記録し、数量・金額の正確性と業務の透明性を確保することです。

商品の受入および払出の実績が記録された受払履歴(在庫台帳)を作成し、商品別の理論在庫を把握します。

仕入先、物流センター、顧客への商品の流れを整理した以下のチャートを元に受け払いのパターンを示します。

◇商品の流れ

◇受け払いのパターン

受入については、仕入先からの入荷処理が主要な流れになります。このため、購買システムと強く結合しており、発注処理、入荷・検収処理によって受入が行われ、在庫数が増加します。また、仕入返品の場合は仕入先への返品処理によって、在庫が減少します。

払出については、顧客への出荷処理が主要な流れとなります。こちらは販売管理システムと強く結合しており、受注処理に続いて、商品の荷ぞろい(ピッキング)が行われ、出荷確定処理によって、商品の払出処理が行われ、在庫が減少します。売上返品は返品処理による入荷処理で在庫が増加します。

仕入、販売以外の受け払いとしては、物流センター間の移動や営業所など、社内での在庫移動が該当します。チャートでは商品センターAと商品センターB間の移動が例です。
なお、チャートでは省略していますが、在庫移動には、物流センター間や営業所間の移動だけでなく、同一物流センター内の棚番(ロケーション)間移動も含まれます。棚番移動は在庫総数には影響しませんが、ピッキング精度や棚卸精度に影響するため、受払履歴として管理される場合が多くなります。

顧客へのサンプル出荷、自家消費、廃棄による処分などの特定目的のための振替処理(他勘定振替)も払出の実績として記録されます。これらの処理には、移動伝票・振替伝票などの証憑となる帳票も作成されます。

また、仕入処理は完了しており所有権は自社にあるものの現物は仕入先が保管している「預け在庫」、既に販売が行われている、または仕入返品済みで所有権が他社にあるものの現物を預かっている「預かり在庫」も存在します。

こうした在庫は在庫区分により管理を行います。

こうした商品の受入、払出が処理の都度、システムに登録され、理論上の在庫が把握されます。

さて、商品の受払処理を行うにあたって、単位変換やセット品などの卸売業の固有の特徴があるのでシステムの機能を含めて解説します。

単位変換

仕入はケース単位で受け入れますが、販売は顧客の多頻度少量配送の要請のため、ピース(バラ)単位で払い出すという場合があります。このような場合、在庫管理上は同一商品について、取扱い単位を統一しないと数量管理が意味を持たなくなるので、システム的に在庫単位を変換します。例えば、発注・仕入においては、箱単位の商品ですが、在庫管理上は受入時に入数のピース単位に変換して、ピース単位の受注オーダーに対応する、というものです。なお、業種によっては、単位変換をケース、ボール、ピースのように多段階で行う場合もあるのでシステム上の考慮が必要です。

単位変換の例

セット品

製造業の部品表ほどの複雑性はありませんが、例えば食品のギフトセットや詰め合わせ商品のように個々の商品をまとめてセット品をつくる場合があります。セット品を扱う場合にはシステム上は商品が親子の関係で表現することで、親商品の受払を行うことによって、子商品の受払をコントロールします。

以下の例であれば、商品Xは、商品a、b、cから構成されているセット品であることがシステム上認識された上で、商品Xの払い出しを行うと、商品a、b、cが同時に払い出されるというものです。

セット品の例

ピッキング

ピッキングは直接的には受払ではありませんが、出荷に密接に関係するので受け払いの派生処理としてここで説明します。

顧客からの受注から出荷までリードタイムが短くなる一方、ピース単位など少量での受注を受けており、要求される納品精度に応えるには、ピッキング業務の良し悪しが大きな影響を与えます。

受注をはじめ、移動を含めた出庫に際しては、商品の荷揃いを行うためにピッキングリストが提供されます。紙帳表のリスト以外にも、ハンディターミナルにデータを送信して、ハンディターミナルの画面に対象アイテムを表示してピッキングを実施する方法や表示器に連動するデジタルピッキングによる方法もあります。

ピッキングの方法に応じてリストの表示方法は異なりますが、ピッキングリストには、棚番号などのロケーション情報、対象品目の商品コード、品名、数量が出力されます。作業効率を高めるためにピッキングの動線に合わせて、棚番などロケーション順にリストが表示されます。

ピッキングリストの指示数は現物が棚に存在することを前提にした数量ですが、在庫精度によっては、ピッキングリストに指示された在庫数が存在せずリストの修正が伴う場合もあります。在庫精度が低いとこうした修正作業が頻発し、業務効率を妨げることになります。

さて、荷ぞろいが終了すると、検品作業が行われます。作業効率と精度を高めるため、商品のバーコードをスキャンしてピッキングリストの指示数、納品書と照合する方法もあります。出荷検品は誤納率を改善するために重要な役割を果たします。

検品後、出庫確定処理が行われると、在庫が減少し、出荷データが生成されます。出荷データには配送トラック、配送担当者、配送ルート等の物流情報が追加され、配送が完了すると完了処理が行われます。

ピッキングから出荷までのシステム上の流れをチャートで示します。

   

【在庫引当】  

在庫は受注時または出荷指示時あるいは移動指示時に引当がされます。

在庫の引当とは、将来の使用が確定している需要に対して在庫を確保する処理のことで、いわば「取り置き」することです。「取り置き」された在庫を「引当済み在庫」と言います。逆に、引当てがされていない在庫を「有効在庫」、または「フリー在庫」などと呼びます。

簡易的なパッケージソフトウエアでは、現物管理中心で、引当機能を保有していない製品ものもありますが、引当機能があると有効在庫が把握できるため、在庫管理の管理水準が高まります。

卸売業の場合、在庫引当は大きく二つの点で意味をもちます。

一つは、有効在庫を確認できるので、受注段階での迅速な在庫回答が行える点です。もちろん、在庫引当の前提には一定水準の在庫管理の精度が求められますが、この点は、競合他社との差別化要因になります。

もう一つは、有効在庫の管理による適正在庫の維持です。引当を行っていない場合、欠品の恐れから、必要以上に在庫を抱える傾向があり、在庫水準が膨らむ傾向があります。引当を行うとこうした問題を回避することができます。もっとも、在庫管理システムに引当機能を保有していたとしても、ダミー引当への対応など運用面でのルール化も併せて必要となります。

【棚卸】 

実地棚卸については、情報システムがサポートする主な機能は、三つあります。

第一に、現物在庫のカウントおよびカウント結果の登録サポートです。リスト方式でカウントする場合、ロケーション別に商品コード、商品名が印字された棚卸リストが必要となりますが、システムから商品マスタ、在庫マスタの情報をもとにロケーション別の棚卸リストの出力を行います。

ハンディターミナルを使用してカウントを実行する場合は、準備作業としてハンディターミナルへ商品マスタ情報の配信を行います。

カウントを実施し、カウントが終了すると、次のステップとして、棚卸結果をシステム本体に取り込みます。リスト方式の場合は、実施結果のリストにもとづき、棚卸入力画面により入力を行います。ハンディターミナルの場合は、実地棚卸結果が登録されたハンディターミナルを接続し棚卸データを基幹システムへ送信します。

第二の機能としては、実地棚卸と理論在庫との差(棚卸差異)の把握です。商品別の実地棚卸の結果数と在庫管理システムの理論在庫数と照合して、差異を算出して棚卸差異表の出力を行います。

第三の機能は、在庫数の更新と在庫金額の確定です。棚卸差異表の出力にもとづき差異調査の結果が入力されます。最終的な差異については、棚卸減耗として調整が行われ、実地棚卸数で在庫数が更新され、期末在庫数および繰越される期首在庫数が確定します。

棚卸入力から棚卸更新までの流れをまとめると以下のチャートのようになります。

【在庫評価】 

売上原価の確定には在庫金額を算出する必要があり、そのためには在庫数と単価を確定する必要があります。在庫数量は受払による理論在庫、もしくは実地棚卸のカウント数で把握します。

単価については、在庫評価の方法により計算式が異なります。先入先出法、総平均法、移動平均法などの評価方法がありますが、自社の会計方針による在庫評価方法に情報システムの計算方法が合致する必要があります。

【その他】 

商品管理の観点から不良在庫への対応が求められます。不良在庫といっても、顧客から返品された瑕疵のある商品、消費期限などの期限切れ商品、販売につながらない“死に筋商品”などに内容は分かれます。いずれにしても良品在庫と区分して管理する必要があります。システム上では、不良品倉庫など仮想の在庫区分を設けるなどして、同一商品でも良品と不良品とを区分して管理することになります。

実務的にはより細分化して、良品、保留品、不良品、廃棄待ち品などに区分を分ける場合もあります。 良品在庫の中にも、滞留在庫など不良在庫の予備軍が存在します。入荷日や最終払出日等の移動履歴情報により対象品を抽出してリストを提供します。一定期間以上の不動在庫については、在庫評価減の検討が行われ、対象になれば、評価損後の帳簿価額で管理されることになります。