2.3 小売業 業務プロセス 販売

業務プロセス

小売業の販売業務は、顧客である消費者に商品を提供しつつ、価値ある購買体験を提供します。ここでは店舗販売を前提に、売り場づくり、販売、決済、イレギュラー処理、日次運用、本部確認、顧客管理、販売情報活用の各業務プロセスを整理します。

売場づくり

店舗では、顧客の動線や認知性を考慮した商品レイアウト設計および棚割が行われ、商品が陳列されます。併せて、店内POP(Point of Purchase)広告などを通じた顧客へのプレゼンテーションが行われます。

販売動向や季節性を考慮して商品を順次入れ替えたり、新たな商品を投入したり、移り気やすい消費者にとって魅力的な売り場を追求していきます。

販売

顧客は店内に陳列された商品を選択し、レジへ進みます。店員はPOS(Point of Sale)レジで、商品を登録し、顧客は代金を決済します。

近年では省人化やレジ待ち時間の短縮などを目的として、商品の登録と決済の両方、あるいは決済のみを小売店の店員ではなく、顧客が行うセルフレジ方式の形態も増加しています。

決済

決済方法としては、現金、クレジットカード、コード決済、電子マネー、デビットカードなどがあり、場合によって掛売も加わります。

現金は現金売上として、クレジットカード、電子マネー、コード決済は未収入金として管理し、法人向けの掛け売りは売掛金として管理します。

現金

掛売上が中心の他業種に比較すると、小売業は一般的に「現金商売」であり、現金の取引比率が高いという特徴があります。一方、政府がキャッシュレス決済を推進していることもあり、近年ではキャッシュレス決済の比率は年々上昇しており、小売店によっては現金決済を上回る店舗も増えています。

クレジットカード            

一般的に、客単価が高くなると、利便性からクレジットカードの利用率は高まる傾向がありますが、タッチ決済の普及も伴い、少額でもクレジットカード利用が徐々に増加しています。

専用端末またはPOSレジでカードの照合・確認を、決済を行います。

コード決済

コード決済には、顧客が店舗のコードを読み取る方式と、顧客のスマートフォンに表示されたコードを店舗側で読み取る方式があります。金額を入力確認して、決済を行います。

コード決済はチャージ残高や銀行口座、クレジットカード等と連携するなど多様な形態があります。

掛売

掛売は回収リスクを伴うため、一般顧客を対象とする店舗事業では通常行わず、一定規模の法人に限定し、一定の金額枠の範囲で行うことが一般的です。現金取引と異なるので売掛金を認める場合は運営ルールを策定の上、店長・本部経理などの承認によって初めて可能とします。

POSレジでも通常売上ではなく、売掛処理として別区分で処理を行い、請求書を発行し、後日回収を行います。回収遅延については重点管理を行う必要があります。

イレギュラー処理
売上値引

売上値引を行う場合は、POSレジに割り当てられた値引キーを使用して行います。あらかじめ値引率が割り当てられていたり、あるいは値引額を入力したりする方法が取られます。値引区分の使用により、売上締め時に出力されるレポートで値引の実績について確認します。

返品

返品を行う場合、返品の理由を確認して受入が可能な場合、処理を行います。レシートなどの当初の伝票を回収して処理を行います。返品商品は再販可能かの判断を行い、所定の手続きに従います。

VOID

VOID(ボイド)とは、POSレジで登録した売上取引を無効(取消)にする処理をいいます。

会計成立後の取消については、当初レシートなどを確認して処理します。

値引と同様に売上レポートでVOID処理を確認します。

売上値引、返品、VOIDはイレギュラー処理なので、ミスの誘発や不正の温床になるため、処理の種類や金額に応じて、実行権限や承認権限を設定します。また、処理結果のPOSジャーナルを検証するなどのモニタリング作業が重要となります。

日次運用

店舗における日次運用をPOSレジの運用を中心に説明します。

開店時にPOSレジの起動を行いますが、これを開局処理といい、閉店時の終了時は閉局処理と言います。

開局処理では、当日の営業日を確認し、必要に応じて、イベントや天候等の入力を行い、つり銭準備金を登録して業務を開始します。

開局後はレジ担当者が売上処理を行います。売上返品や売上訂正など売上変更に伴うイレギュラー処理については、不正防止と誤謬防止の観点で権限を限定した管理メニューによって処理を行います。

当日の売上確定処理を売上締めといいます。店舗によっては、1日に複数回、売上締めを行う場合もありますが、最低1日に1回は行います。24時間営業の店舗は社内で締め時間を定めます。POSレジが複数存在する場合はPOSレジ毎に処理を行い、すべて完了したら店舗としての締めを行います。

締め処理に先立ってPOSレジから、日次の売上集計表(日計表)を出力または参照します。この帳表は、現金売上、カード売上、売上修正など、売上の区分別に合計金額が表示されているので、この区分別に現金の有り高やクレジットカード等の決済端末の取引明細と照合を行います。照合で差異がある場合は、個別明細を検証し、正しいことを確認します。検証作業に問題がなければ、本締めを行います。この処理により、売上が確定します。

売上実績、現金売上について店舗責任者が最終確認を行い、POSを閉局します。

そして、締め後、売上実績データを本部へ送信します。

現金の取り扱い

現金については、現金有り高を金種別に確認し、つり銭準備金(顧客への釣銭提供のために用意される小額現金)を控除した売上現金とPOS上の現金売上を照合します。もし、過不足が発生した場合には原因の追究と本部への報告を行います。

売上現金の銀行への入金については、当日の夜間金庫に預けるか、あるいは翌日日中帯に銀行に持ち込みます。

本部から物理的に目が届きにくい店舗で現金を扱うため、着服などの不正や盗難などの事故が発生しやすいというリスクが伴います。現金の取り扱いは、店舗での重要な管理ポイントです。

本部確認

本部側では、店舗別の売上報告(売上実績データ)、本部への送金金額を検証します。本部への送金は銀行など金融機関を通じて行うため、金融機関の営業日に行われます。店舗の営業日の売上に対応して送金が実施されれば、両者が1対1で照合が容易ですが、週末や休日など複数営業日を1回にまとめて入金する場合は営業日の累計金額と入金額との照合が必要になります。

店舗および本部の売上報告・現金入金のスケジュール例

店舗事業では現金を直接取り扱うため、資金が店舗に滞留すると会社全体の資金効率が悪化するとともに、多額な現金が店舗にあること自体が盗難や不正のリスクとなるため、タイムリーな入金が求められます。本部(経理)での入金照合は、売上の実証性の確認であるとともに現金管理の意味合いもあるので重要な作業となります。

キャシュレス決済の入金確認

キャシュレス決済の発生は店舗であっても、一般的に入金消込は本部経理で行います。

決済代行会社等を通じて、入金明細を示した入金通知書が届き、その後、加盟店手数料が差し引かれた上で、決済代金が所定の銀行口座に振り込まれます。入金通知書の内容、入金金額、店舗で処理した店舗別・決済代行会社別あるいはブランド別合計金額との照合を行い、未収入金の消込処理を行います。

顧客管理

顧客管理の代表的ツールにポイントカードがあります。従来のプラスチック製ポイントカードに代えて、近年では、スマートフォン・アプリや会員アプリを利用したデジタル会員証が普及しています。

ポイントカードは、顧客属性を把握しつつ、店舗に対する顧客のロイヤリティを向上させるのに役立ちます。ポイントカードの一般的な仕組みを簡単にまとめると以下のとおりです。

顧客属性情報(氏名、年齢、住所、性別、メールアドレス、携帯番号等)の入手を条件に顧客にカードを発行、あるいはアプリ会員証が有効になります。

顧客が商品・サービス等を購入した際、ポイントカードを提示し、購入金額に応じて、一定の率でポイントを付与します。このポイントは累積することが可能であり、累積したポイントに応じて、商品やサービスと交換できます。ポイントには有効期限を設定しているものと期限を設定していないものとがあります。また、ポイントを付与した店舗でしか利用できない場合と他店でも利用可能なものなど、ポイントカードの利用形態にはバリエーションがあります。

ポイント制度は、購入金額や利用頻度に応じて顧客へ還元を行い、再来店や継続利用を促進する仕組みです。

ポイントカードの他にハウス電子マネー・プリペイドカードがありますが、こちらは一種の前払の買い物券です。金額に応じてプレミアムが付与される場合もあり、このプレミアムは、顧客がハウス電子マネー・プリペイドカードを購入する際のインセンティブになります。キャッシュレスで買い物ができるほか、ギフトとしても利用されることもあります。なお、前払なので、顧客の店舗に対するロイヤリティが高くないと購入には至りません。

店舗側から見ると、ハウス電子マネー・プリペイドカードの販売は、あくまでも将来の購入代金を預かっている(前受)ことに過ぎず、それだけでは売上を意味しません。そこで、店舗ではプリペイドカードの販売を、取引区分を分けるなどして、通常の商品売上と区分して把握する必要があります。そして、顧客が実際に、プリペイドカードを使って商品を購入した時点で初めて売上を認識することになります。

販売情報活用

POSデータは販売実績の記録にとどまらず、売れ筋分析、時間帯別分析、ABC分析、欠品分析などを通じて、品揃えや発注、販促、棚割の改善に活用されます。販売情報を継続的に分析し、改善につなげることが小売業の競争力の源泉となります。

そして、前述した顧客管理と連携した購買履歴やクーポン配信、来店履歴などを統合して管理するCRM(Customer Relationship Management)を活用して、顧客に価値ある購買体験を提供していきます。