1.2 小売業 概要 組織

概要

小売業の組織について、中堅規模の小売業を例に、主要な役割を業務との関係で整理・解説していきます。

中堅規模の小売業では、組織は、店舗開発、店舗運営、商品、物流、管理 の5つの機能で構成する場合が一般的です。

これにより、業務の流れを意識した機能別組織となり、各部署が役割分担しながら、消費者に商品をとどけ、満足度の高い購買体験を提供します。

組織図の例を以下に挙げてみます。

 

店舗開発部

店舗開発部は、出店・改装・移転・退店など、店舗に関する投資および施設整備を担当する部門です。企業の成長戦略にもとづき、店舗網の拡充や再編を推進し、店舗という経営基盤を構築する役割を担います。

出店戦略・出店計画では、企業の成長戦略にもとづいて出店戦略や出店基準を策定するとともに、不動産物件の情報収集、商圏分析、収益予測、投資回収試算などを踏まえ、個別出店計画を策定します。出店は多額の投資を伴うため、中期事業計画との整合を図るとともに、採算性の検証や資金調達について経営企画部門や管理部門と連携して検討します。

立地調査・契約管理では、立地調査や物件評価を行うほか、不動産オーナーとの賃貸借契約の交渉・締結、各種許認可の取得など、出店に必要な契約・手続きを担当します。

店舗設計・開店準備では、店舗レイアウトや内装工事の計画・施工管理、什器や初期在庫の手配など、店舗オープンに向けた準備を主導します。出店プロジェクトでは、店舗運営部と連携して開店準備組織を編成し、開店後は店舗の運営を店舗運営部へ引き継ぎます。

改装・移転・退店では、既存店舗の改装や移転、閉店・退店に関する計画の策定、契約手続き、施設整備などを担当し、店舗網の最適化を推進します。

店舗運営部

店舗運営部は、傘下に店舗をもち、店舗運営全般を統括する部門です。店舗開発部が整備した店舗を引き継ぎ、継続的な営業活動を行うとともに、各店舗の業績向上と店舗運営の標準化を推進します。

店舗運営・損益管理では、店舗の売上・利益・在庫などの損益管理、人員配置、店舗オペレーションの管理・標準化を行います。店舗は一般に利益責任を負う組織として運営されるため、店舗運営部は各店舗の業績を管理し、売上拡大と収益性向上の両立を図ります。

販売促進・売場管理では、販売促進、特売、売場づくり、商品陳列などの営業施策を企画・実施し、店舗の販売力向上を支援します。また、接客やレジ運営など、顧客満足度の向上につながる店舗運営を推進します。

店舗指導・人材育成では、店舗従業員の教育・育成を行います。
一定規模以上の企業では、店舗を地域別・エリア別にグルーピングし、エリア単位で管理する場合があります。

また、販売推進や営業企画などのスタッフ部門を設置し、店舗運営を側面支援することもあります。エリア組織やスタッフ部門には、スーパーバイザー(SV:Supervisor)が配置されることが多く、各店舗を巡回しながら、店舗運営上の課題の把握、標準オペレーションとの比較・分析、改善指導を行い、店舗の業績向上と運営品質の維持・向上を支援します。さらに、店舗運営方針の伝達や店舗間の情報共有、課題認識の共有を目的として店長会議が定期的に開催されます。企業規模が大きくなると、全社一斉ではなく、エリア単位で開催される場合もあります。

EC・デジタル対応では、EC(Electronic Commerce)を店舗販売と一体的に運営する企業もあれば、オムニチャネル戦略を推進するため、EC・デジタル部門として独立した組織を設置する企業も見られます。

商品部

商品部は、マーチャンダイジング(MD:Merchandising)の中核を担う部門です。マーチャンダイジングとは、市場や顧客ニーズを踏まえ、魅力ある商品を企画・選定し、適切な価格、数量、時期、販売方法で提供することにより、売上と利益の最大化を図る活動をいいます。商品部は、魅力ある商品を有利な条件で安定的に調達するとともに、適切な品揃えと在庫水準を維持し、売上機会と収益性の向上を図ります。

商品企画・MDでは、市場動向や販売実績を分析し、新商品の企画・選定や商品構成(品揃え)の企画を行います。また、商品部は店舗運営部と密接に連携し、新商品の導入、販売促進施策、売価改定などの商品情報を適時共有するとともに、商品知識や販売方法に関する教育・研修を実施し、店舗での販売活動を支援します。

販売計画・価格設定では、市場動向や販売実績にもとづいて販売計画および仕入計画を策定するとともに、売価設定や販売施策を立案し、商品政策を推進します。

商品調達・仕入管理では、新規仕入先の開拓・選定、仕入先との価格、最小取引単位、納期、決済条件などの交渉および契約締結を行います。また、発注、仕入内容の確認、買掛金の確定、仕入リベート管理などの購買オペレーションを担当します。ただし、企業によっては、発注や物流センターでの検収などの実務を物流部へ移管している場合もあります。

商品情報・在庫管理では、商品マスタや仕入先マスタなどの商品情報を管理するとともに、商品在庫の計画・管理を行います。小売業では、品揃えを充実させるほど販売機会は増える一方で、在庫保有や管理コスト、資金負担も増加します。そのため、欠品を防止しながら過剰在庫を抑制し、売上機会と在庫投資のバランスを最適化することが求められます。なお、企業によっては、物流センターでの在庫管理などの実務を物流部へ移管している場合もあります。

商品部の業務では、仕入先との折衝や市場動向の把握が重要であり、専門的な商品知識が不可欠です。そのため、組織は商品カテゴリー別、仕入先別、あるいは国内・輸入などの取引形態別に編成されることがあります。中堅小売業では、商品企画から調達、販売計画までを商品部が一体的に担当することが一般的ですが、大規模な小売企業では、商品企画部門、MD部門、バイヤー部門などに機能を分化させる場合もあります。

物流部

物流部は、物流センターにおける商品の保管・入出庫管理、店舗および顧客への配送、物流ネットワークの運営など、物流全般を担う部門です。商品を効率的かつ安定的に供給することで、店舗運営を支援するとともに、物流コストの低減とサービス水準の向上を図ります。

入出庫・保管管理では、商品部が行った発注にもとづき、仕入先から納品された商品について、物流センターで検品、受入、保管を行います。また、商品の入出庫管理や保管状況を適切に管理し、店舗への安定供給を支えます。

配送・物流管理では、店舗からの補充要請や出荷計画にもとづき、商品のピッキング、払出処理、店舗への配送手配を行います。EC販売を行う企業では、顧客向け商品の出荷も担当します。また、配車計画の策定、物流車両や物流設備の維持・管理、外部物流事業者の管理などを通じて、物流ネットワーク全体の効率化を推進します。

流通加工・返品管理では、小分け、値付け、セット品の組立、梱包などの流通加工を行い、店舗での販売や配送に適した状態に商品を整えます。また、店舗からの返品商品の回収や仕入先への返品処理など、返品に関する業務も担当します。

棚卸・在庫管理では、物流センターにおける商品の在庫数量を適切に管理するとともに、実地棚卸を実施し、帳簿在庫との照合を行います。また、滞留在庫や長期在庫を把握し、商品部と連携して在庫の適正化を図ることで、欠品や過剰在庫の防止に努めます。

近年では、物流業務の効率化や物流コストの削減を目的として、物流機能の全部または一部を3PL(Third Party Logistics)事業者へ委託する企業も多く見られます。また、商品によっては、物流センターを経由せず、仕入先から店舗へ直接納品する仕組みを採用する場合もあります。

管理部

管理部は、経理・財務、情報システム、人事・労務、総務・法務などの管理業務を統括し、店舗運営や本部業務を支える部門です。企業全体の経営基盤を維持するとともに、各部門が効率的に業務を遂行できるよう支援します。

経理・財務では、会計処理、決算、資金管理、予算管理などを行うほか、店舗の損益管理や出店に伴う投資計画・資金調達を支援します。また、固定資産やリース資産の管理なども担当します。

情報システムでは、POSシステムや販売・在庫・会計などの基幹システム、店舗および本部のネットワークの企画・導入・運用・保守を行い、業務の効率化と情報セキュリティの維持を図ります。

人事・労務では、採用、人材配置、人事制度の運用、教育・研修、社会保険、給与計算、勤怠管理など、人材に関する業務全般を担当します。

総務・法務では、契約書や社内規程の管理、コンプライアンスの推進、株主総会・取締役会の運営支援、店舗に関する契約や各種許認可の管理、庶務業務などを担当し、企業活動を円滑に支援します。