卸売業の在庫管理プロセスについて、実地棚卸、在庫評価の概要を整理します。

実地棚卸
実地棚卸とは、倉庫や営業所に保管されている商品を実際に数えて、帳簿在庫(理論在庫)の数量と一致しているかを確認する作業です。
実地棚卸は在庫数量の正確性を確認するとともに、期末商品棚卸高の信頼性を確保し、財務諸表の適正性を支える重要な活動です。
実地棚卸の実施時期は企業によって異なります。決算期末のみ実施する企業もあれば、四半期や月次で実施する企業もあります。また、日常的に循環棚卸を実施し、在庫精度の維持に努める企業もあります。
実地棚卸の基本プロセスとしては、事前準備、棚卸実施(カウント)、差異分析、修正処理の4つに分かれます。
(1)事前準備
実地棚卸の基準日(通常は期末日)、対象範囲、実施体制などを決めて、実地棚卸実施要領にまとめ、関係者に事前共有します。そして、在庫の整理整頓を行います。物流センター、営業所、外部倉庫などの場所別に、良品、不良品、返品予定在庫、預かり在庫などの在庫区分ごとにエリア内を整理して、カウント作業がミスなく、円滑に行えるような環境を整えます。併せて、ロケーションマップを作成して、網羅性を担保します。実地棚卸の方法にもよりますが、ロケーション別の棚卸リストの出力や棚卸用のハンディターミナルの準備を合わせて行います。
(2)実地棚卸の実施(カウント)
実地棚卸の実施方式には、一斉棚卸と循環棚卸があります。一斉棚卸は決算期末に一斉に全在庫をカウントする方法なので、業務オペレーションを止める必要があります。これに対して、循環棚卸は日常的に部分的に実施していく方法で、棚卸対象品目については、入出庫等の物流を止めて実施します。
カウントに際しては、帳簿在庫を表示させないブラインドカウントが基本となります。帳簿数が表示されていると帳簿数に合わせようとする心理が働くためです。棚卸リストに記載する方法の場合、現品のカウントと在庫の記録を分離することで内部統制を機能させます。
一方、ハンディターミナルによる実施の場合、カウントと記録が同時になるため、担当者を変えて独立して2回カウントするダブルカウントが有効です。
実地棚卸の統制方法が十分でないと不正の温床にもなるため、十分な注意が必要です。
実地棚卸に際しては、経理、内部監査など管理部門が立ち合い、会計監査人も必要に応じて立ち合い、棚卸手続の妥当性を確認します。
(3)差異分析
棚卸リスト方式の場合は、数量データをシステムに入力し、ハンディターミナル方式の場合はデータをシステムにアップロードして、実地棚卸数をシステムに取り込み、理論在庫数との差異を把握します。
そして、差異の原因分析を行います。差異要因としては、受払記録の誤り、入荷・出荷処理漏れ、保管場所の誤り、棚卸作業ミスなどが考えられますが、原因を分析、追及して記録します。この差異分析はオペレーションの改善に活かすことで、在庫精度の向上に寄与するため、とても重要な活動です。
(4)修正処理
差異原因を突き詰めた上で、最終的な棚卸差異を調整します。権限者の承認を得て、記録を残すとともに修正処理を行います。修正処理は在庫金額、売上原価への影響につながることから、慎重な対応が求められます。
実地棚卸に使用した実施要領、棚卸表、差異リスト、原因リストの記録は取りまとめて保管します。
在庫評価
商品在庫高の算出には在庫数と単価を確定する必要があります。すでに述べたとおり、在庫数量は受払による帳簿在庫(理論在庫)、もしくは実地棚卸のカウント数で確定します。受払による帳簿在庫(理論在庫)が把握できれば、通常は理論在庫により日常管理を行い、期末に実地棚卸で確認します。
単価については、在庫評価の方法により計算式が異なり、先入先出法、総平均法、移動平均法、最終仕入原価法などの評価方法がありますが、各企業の会計方針にもとづきます。
在庫管理システムの更新処理によって、数量と単価が確定し、在庫金額が算出されます。その結果、期末商品棚卸高が確定します。
滞留在庫
長期間、出荷実績がない商品や販売見込みが低下した商品、経年劣化した商品は、実際の経済的価値が帳簿価額を下回る場合があります。
在庫評価減は、帳簿価額を減額(評価減)して、資産の評価を適正化することを目的に行う処理です。
一定期間入出庫実績がない在庫を不動在庫と呼びますが、滞留在庫の管理のためには、不動在庫の抽出と特定が必要となります。実地棚卸時に現物を確認して、対象品目を特定する方法に加えて、システムで保有している情報を活用し、対象品を90日、180日、365日などの滞留期間で抽出してリスト出力する方法もあります。こうした情報を踏まえて、在庫評価減の検討が行われます。権限者の承認を得て、記録を残すとともに在庫評価減処理を行います。
なお、評価減の対象となった在庫については、管理上区分して把握し、必要に応じて処分計画や追加評価の検討を行います。
卸売業では取扱品目数(SKU)が非常に多いため、実地棚卸による在庫精度の維持と、システムによる受払管理の精度向上を両立させることは、経営管理上とても重要となります。
