2.2.1 業務プロセス 販売1(口座開設、受注)

業務プロセス

ここでは、卸売業の販売業務プロセスについて、新規取引口座の開設、受注について概要を整理します。

 

営業活動は、大きく新規顧客の開拓と既存顧客への継続的な受注活動に分けられます。

新規顧客の開拓は時間と労力を要しますが、企業の成長には不可欠です。潜在顧客のニーズを把握し、商品提案・条件提案を行い、受注獲得につなげます。

新規取引口座の開設

属性情報・取引条件

新規顧客から初回受注を受ける場合は、新規取引口座の開設を行います。

取引時に確認すべき顧客の属性情報としては、会社名、代表者、所在地、取引銀行、資本金、従業員数、売上規模などがあります。

取引条件としては、標準価格・掛け率、リベート条件、標準納期、納品場所、受注方法、最小発注ロット、価格見直しサイクル、請求締日、支払方法・支払いサイクルなどがあります。

通常は取引基本契約書を締結しますが、単発取引や重要性が低い場合は、簡易書式で対応する場合もあります。

信用調査と与信設定

卸売業では掛売取引が中心であるため、回収リスクを考慮した信用調査が極めて重要です。

信用調査会社のレポートを取得するなどして財務状況の確認を行います。

新規取引では、当初は掛け売りを認めず、一定期間は前払い、現金取引限定などの条件とする場合もありますが、与信枠と呼ばれる取引限度額を設定して回収リスクをコントロールします。

なお、既存取引先についても与信枠は固定的なものではなく、過去の取引実績を踏まえて、与信枠(取引限度額)を適時見直します。

部署間の役割分担

取引口座の開設に関する部署間の役割分担について、一般的に、基本情報は営業部が取得し、経理が信用調査を行い、回収条件を設定します。そして営業責任者が口座開設について承認を行います。その後、情報システムの顧客マスタに登録を行います。基本属性は営業部が、回収条件については経理が登録を行い、管理部の権限者が承認を行います。このように職務分掌を明確にすることで内部統制を機能させます。

例外処理

実務では、正式な口座開設が行われていないものの、スポット取引など一時的利用の取引先も存在します。一時利用コード、スポット取引コードなどで実務を対応しますが、あくまでも例外処理なので、使用時の権限者の承認や事後のモニタリングなど管理手続きの強化が必要となります。

契約更新

上記は新規取引時の手続きを記載しましたが、取引開始後も契約更新時などに定期的に評価を実施し、必要に応じて取引条件の見直しや取引停止判断を行います。

受注・価格決定

営業部は顧客へ見積提示を行い、協議を通じて、価格・掛け率、値引条件、納期、決済条件、納品場所、受注ロットなどの条件を確定させます。

掛け率について

卸売業では取扱商品数が膨大であるため、個別商品ごとに売価設定をするのではなく、一般的に掛け率方式を使用します。

掛け率方式とは、仕入価格(原価)× 掛け率 = 売価 という算定方法です。

仕入価格を基準にすることで仕入価格の変動を反映しやすく、利益管理が行い易いというメリットがあります。この掛け率は顧客別に設定することで顧客ごとの販売政策を反映しやすくなります。

また、掛け率の設定方式には、顧客×商品グループのマトリクス で設定される場合もあります。

(例)顧客・商品グループ別掛け率

販売管理システムでは「掛け率マスタ」で管理されます。掛け率体系が複雑になりすぎると、管理負荷が増大するため、定期的な見直しが必要となります。

受注

与信確認と在庫確認

受注の際には、都度、取引金額があらかじめ定めた顧客別の与信枠を超えていないか確認を行った上で、商品の在庫状況を確認します。与信枠を超えていれば、売掛残高の状況を踏まえて、権限者による追加承認手続きが必要となります。

なお、売掛金の延滞先など与信を停止している先に対しては、販売管理システムの受注段階で取引を止め、業務が進行しないように制御します。

値引き管理

販売上の重要項目としては、値引きがあります。新規取引や取引維持の営業戦略的な視点から値引きは重要な施策となりますが、無秩序な値引きは採算割れにつながる恐れがあるため慎重に行う必要があります。値引きの管理としては、営業担当の権限枠の設定、一定率以上の上長承認、採算シミュレーションなどの社内ルールの整備とその遵守が重要です。