小窓の趣旨

ビジネス・プロフェッショナルのために

私は、これまで大手法人に所属し、30年以上に渡って経営管理に関するコンサルティングを中心としたクライアントサービスを行ってきました。このたび大手組織を離れて、独立コンサルタントとして再出発することにしました。

大手法人時代に、新人コンサルタントから「ビジネスの仕組み(ビジネスシステム)を理解したいので良い本を教えて欲しい。」という相談を受けることがよくありました。『それでは』と思い、幾つか思い当たる本を紹介しました。ただ、ふと感じたのは、紹介しようとした本を改めて良く見ると、個別テーマを深堀し過ぎていて、初心者にはやや専門的なもの。ビジネスの管理業務の全体感が記述されてはいるものの、あまりにも教科書的であり実務との乖離が大きいもの。あるいは、概要説明には良いものの、業種特性がほとんど無視されているので、特定のクライアントに当てはめるとちょっとピンとこないもの。という風に、どれをとっても「帯に長し、たすきに短かし」という印象を受けたのでした。

そこで、自分の経験も踏まえて、ビジネスコンサルタントなどのプロフェッショナルにとってのビジネスシステムの入門ガイドのようなものを作れないかと思ったのでした。

ビジネスシステムの理解という意味では、ビジネスコンサルタントに限らず、業務システム導入を行うITエンジニア、金融機関の融資担当者など業務上、企業の仕組みの理解が必要な方であれば、何かしらの有益なヒントになるものと信じています。

そして、方法として、柔軟性のあるブログという形式で表現してみたいと思い、着手したものです。

ブログといっても「つれずれなるままに」記載しても発散しそうなので、ある程度、構成を定めて整理したいと考えています。また、「ビジネスシステム」と言っても広範囲なので、すこし絞り込みを考えました。

企業経営を形作る上位概念の枠組みとして、経営理念と経営戦略があります。本ブログでは、両者は扱わず、経営戦略を実現するための仕組みである「ビジネスシステム」に焦点を当てたいと思います。経営理念、経営戦略については、既に様々な書物やメディアで紹介されていますが、「ビジネスシステム」はあまり取り上げられていないと考えるからです。また、ビジネスの実務を理解する上で、この「ビジネスシステム」は極めて重要な要素と考えるからです。

「ビジネスシステム」と言っても、かなり広範囲な概念なので、経営管理の視点で、組織、ビジネスフロー、情報システム、財務構造の4つの切り口で整理したいと思います。

一般的に経営資源は、人、モノ、金、情報と言われますが、この4つの切り口を理解することで経営資源の配置を比較的容易に理解することができると考えるからです。

実際に、私は実務面でもこの4つの視点で企業を分析することに努めてきました。短期間に企業の全体感を理解できるという点で非常に有効な方法であると考えています。本ブログでは、中堅企業をモデルにして進めていきたいと思います。規模が大きく仕組みが複雑になる大企業に比較して、中堅企業の方が、ポイントが分かりやすいと考えたからです。

4つの切り口の意義を簡単にまとめておきたいと思います。

組織

「組織は戦略に従う」という命題もありますが、組織を理解することは、ビジネスの構造を理解する上で非常に重要です。企業に属する人々がどのような役割分担をして、どのような意思命令系に従っているかを把握できるからです。組織機能の配置を知ることで、企業独特の思想や経営者の考え方を知ることもできるのです。

ビジネスフロー

ビジネスの概要フローの理解は、顧客や仕入先などのビジネス上の登場人物と会社組織内の各部門が業務上、互いにどのように関係しているか、どのようなやり取りがあるか知ることができます。つまり、どのようなモノの流れが実現しているか、主要な情報がどこからどこへ流れるか、資金の流れがどのようになされるかについて、ハイレベルな視点で捉えるものです。これにより日々のビジネスのオペレーションがどのように組み立てられているか全体感を理解することができるのです。

情報システム

業務オペレーションを実現する際に情報システムを活用しない企業は皆無でしょう。両者は密接に係わっていて不可分です。そして、各業務オペレーションで処理された情報が基幹情報システムに蓄積され、会計データへと連携していきます。会計データは、経営の意思決定を行う際に重要な判断材料になります。そうした意味で、企業の基幹系情報システムの理解は業務で発生したデータがどのようにシステムに取り込まれ、会計に集約され、経営判断に利用されるのかというメカニズムを知ることになります。このデータの流れに問題があると意思決定の遅れやあるいは誤った判断につながるリスクにもつながります。

財務

財務諸表の構造を知ることは、ビジネスを理解する上で必須となります。どの程度の売上規模のビジネスであるのか、損益構造はどうなっていて、利益率はどうなのか、どのような資産を保有してビジネスを展開しているのか。定量的な財務データの把握はビジネス上の重要性の判断や財務インパクトへの理解を行う上で不可欠となります。また、業務オペレーションがどのように財務諸表に影響を与えているのか、その関係性を理解することも非常に重要です。

これら組織、ビジネス概要フロー、情報システムの関連、財務構造の4つの切り口を相互に関係づけながら見比べると、ビジネスの構造についての理解が深まるとともに、潜在的に企業が抱えるリスクや経営課題について仮説が立てやすくなると私は考えます。

 そして、これら4つの切り口を製造業、卸売業、小売業に当てはめて、代表的な業種特性を整理しようと考えています。業種によらず普遍的な要素もある一方で、業種特性により差が生じている部分もあるのも事実であるからです。 ビジネスコンサルタントや会計士、税理士などビジネス・プロフェッショナルを初め、経営企画室などの業務に携るビジネスマンにとって幅広く、ビジネスシステムの概要の理解が進むものと信じていますし、一助になればと考えています。