販売管理プロセスに入る前に、ここでは、販売管理の前提となる販売チャネル、取引先審査、収益認識基準について整理します。
販売チャネル
製造業における販売チャネルとは、自社の製品が最終ユーザーに届くまでの経路を指します。製品の特性や顧客の購買行動、自社の営業体制などに応じて、次のようなチャネルが組み合わされます。
(1)直販(ダイレクトセールス)
営業部が顧客と直接取引する形態です。個別仕様が多い工作機械、計測器、産業装置、据付・調整・試運転など技術対応を伴う製品、導入後の保守(サービスエンジニア)の関与が大きい製品など、顧客要求に合わせた技術説明が不可欠な高付加価値製品では、直販が適しています。
(2)販売代理店・特約店
代理店が商流と一部の技術対応を担う形態です。多くの製造業では「大口顧客は直販」「地域・汎用用途は代理店」など、併用モデルが一般的です。地域ごとに拠点を持ち、小口顧客を広くカバーできる。また、見積・納入・回収までの実務を委託できるといったメリットがあります。
(3)商社経由
商社が販売、物流、与信の一部を担うモデルです。海外輸出や多国間取引、与信リスクを抑えたい場合、または、複数メーカーの製品をまとめて販売する案件などでよく使われます。
(4)OEM(Original Equipment Manufacturing)・ODM(Original Design Manufacturing)供給
自社ブランドではなく、他社ブランド製品として供給するモデルです。販売チャネルというより「供給形態」に近い位置付けですが、販売量の確保、設計・品質要求の調整、契約管理などが販売管理プロセスと密接に関係します。
取引先審査
製造業に限った話ではありませんが、取引を希望する先すべてと実際に取引を行うわけではなく、一定の社内の審査を経て取引先との取引を開始することになります。具体的には、取引を始める前に、営業部・管理部が連携し、次のような観点から取引先を審査します。
(1)財務面の評価(与信管理)
売掛金の回収可能性、財務諸表による安全性・収益性を判断し、リスクに応じた与信限度額の設定をします。取引開始後は、定期的な財務モニタリングによる限度額の見直しを行います。出荷前に限度額の範囲かどうかの与信チェックは販売管理上、重要なコントロールポイントとなります。
(2)法務・コンプライアンス面の評価
反社会的勢力との関係有無、マネーロンダリングの潜在リスク、契約違反・訴訟情報によるリスク、国際取引の場合の輸出管理(安全保障貿易管理上の規制対象か否か)がポイントになります。
また、製造業では、図面や技術資料を扱うため、秘密保持義務や技術情報管理が審査の重要項目です。
(3)契約の締結
審査の結果、取引可と判断されれば、以下の契約・条件を整備します。
•取引基本契約(価格、支払条件、責任範囲など)
•技術契約(秘密保持、図面の取扱い、保証条件)
•個別の取引条件(受注単位、納期、掛率、納品場所 など)
契約に基づいた取引条件が販売管理システムのマスタに登録され、受注から売上計上までの業務が統制されます。
収益認識基準
製造業では、製品の売上をいつ認識するかが実務上の重要ポイントになります。
収益認識は 「履行義務がいつ充足したか」=支配が移転した時点 により判断します。一般的には以下の2つの方法のいずれかが採用されます。
(1)出荷基準
製品を出荷した時点で支配が移転したと判断できる場合に適用します。出荷後の返品リスクが限定的で、契約上、出荷をもって引渡しとしている。また、据付・調整などの役務が売買契約に含まれない多くの標準品・量産品で採用されます。実務的には、販売管理システムの出荷処理により納品書が発行されると同時に、売上が認識されます。
(2)検収基準
顧客の検収完了が、契約上の引渡しの条件となっている場合に採用します。
- 客先での据付・試運転を完了して初めて受領とされる装置
- 機能確認(性能保証)が契約条件に含まれる場合
- 官公庁・大企業の検収制度があるケース
この場合、出荷処理では売上は認識されず、顧客からの検収書・受領通知をもって売上計上となります。
